2022年6月23日

両親の承諾を得た翌日、僕は早速動き始めた。

カフェの営業許可をいただくには、上下水道の排水管工事をしなくてはいけない。

サロンが入っているビルは戦後すぐに建て直しをしている古い建物で、その古さを生かしたレトロな外観で人気のあるビルだ。ただしかしその反面、何か工事をするとなると古さゆえ簡単にいかないだろう事は想像がついた。

とにもかくにもまずは大家に相談である。
大家が工事はダメと言えば、そもそもカフェはできないのだから。

ーーー 夕暮れどき。
僕は大家に自分の想いを告げた。

(工事が無理ならカフェはあきらめよう・・)

意を決した僕に大家はこう言った。

「カフェ良いですね!水道工事やりましょうよ!中道さんの新しいチャレンジ応援しますよ!」

涙があふれた。

このビルでサロンを始めて約10年。
僕が夜遅くまで残業してると、「お疲れさん!これ食べて!」と、弁当の差し入れをしてくれたり、コロナで緊急事態宣言がでた時、いち早く家賃を免除してくれたり。

心根の優しい大家なんだ。

大家に話をした後すぐに管理会社の担当者が来て、更にその後すぐに水道屋さんも来てくれた。夕方のたった数時間で話は一気に進み、水道工事は7月で決まった。

皆のあたたかい言葉が嬉しかった。

頑張らなきゃ!

ロールスクリーン越しに射し込む夕陽が、サロンの中をオレンジ色に染めていた。