披露宴では、感動の涙の瞬間がある。
スピーチの場面やお手紙の場面・・・。
お2人の情に触れ、またゲストの情に触れ、会場内はそういう空気に包まれていくものだ。
ところが挙式の中での感動は披露宴とは少し違うものだ。
専門式場が作るチャペル式では、ご両親への感謝の手紙をプログラムに入れるなどして、
挙式だけでも披露宴のような感動が生まれるように色々と演出が施されている。
でもぼくがしているような本物の宗教にのっとった神社や寺院での挙式では、
神聖な儀式をきっちりと行うという方に重きが置かれ、感動というものとはまた違う趣きがあるもので、
特に和婚の場合は、日本の伝統の色が強く、「儀式」という世界観だ。
それはそれで、素晴らしい世界観ではある。
当社は、そんな和婚が圧倒的に多く、さらに披露宴が無い挙式のみが多いので、
上述したような披露宴のような感動シーンというものをどうすれば挙式にも生む事ができるのかを常に考える。
ぼくが想う和婚での大切なシーンのひとつに、花嫁様の美容着付けが仕上がった瞬間のご両親とのご対面がある。
花嫁様が仕上がったその時に、お母様に一番に見ていただきたいという思いが強い。
で、それがあまりに出すぎてしまって、最近では、花嫁様の着付け室にお母様も一緒に入っていただく事がほとんど。
それは良い意味では、とってもアットホーム。
今の時代の結婚式の作り方ではないかと考えている。
でもそれでは、楽しくて優しい時間を過ごす事はできても、披露宴のような感動シーンとはいかない。
お母様が花嫁様の口紅をつける儀式や、ご両親へのご挨拶のシーンを演出として作る事はできる。
でも、それはあくまでも婚礼会社にやらされてる感が強く、ナチュラルではないと思う。
ではどうすればいいのか。
それは、前日までのストーリーではないかと思うんだな。
ぼくは、1か月前、1週間前、前日・・・、お母様との会話の時間を作るように努めている。
どんなにカジュアルでラフなお母様であったとしても、娘の嫁ぐ日はそれはそれは特別な日なのである。
ぼくはその気持ちの部分を挙式の一番大切な部分だと考えている。
披露宴とはまた違う挙式の感動というものは、そういう内面から生まれてくるものではないか。
決して婚礼会社が作る演出から生まれてくるものではないんだと思う。
これはとても難しく決まった答えはなくて、それぞれの親子の成り立ちによるんだろう。
だからぼくの仕事は、その親子の成り立ちを半歩でも一歩でも入り込んで見定める事なんじゃないかなと思う。
どこまでできるかわからないけれど、少しでもハートの部分を理解できるプロデュース会社でありたい。
そしてそれは、心をこめて挙式を運営してくださる神社や寺院の皆さまに対しての敬意でもあり、
プロデュース会社の価値を問われる最もコアな部分ではないかと思うのである。