2022年6月

僕の実家は喫茶店だ。

高校生の頃、休日になるとその喫茶店のカウンターに立ち、サイフォンコーヒーを淹れていた。家業の手伝いである。

カウンター越しに常連さんと会話するのも仕事のひとつ。今の僕の接客スタイルの原形は、その頃に培ったものかもしれない。

その喫茶店の名前は「檸檬」。
読書家の父が、梶井基次郎さんの小説のタイトルから拝借したものだ。

今回僕がカフェをする事を両親に話すると、「そのカフェの名前、檸檬にして!」と。

(いやいや、僕の好きな名前にさせてよ・・)

僕は店の名前にこだわりがある訳ではないけど、わかりやすく皆から親しまれる名前がいいなぁと思うんだ。

ここの住所は、姫路市綿町156。

すぐに、“綿町カフェ” がいいなと思った。
直感とヒラメキは大事である。

大きな交差点の角地にある街角カフェ。
地域の人たちに愛されるお店にしたいという思いにピッタリの名前じゃないか。

僕はすぐにロゴマークを作った。
サブタイトルは、coffee & wedding。イメージカラーは、大好きなターコイズブルー。

こうと思えば即決で名前は“綿町カフェ”に決まった。

ただ、両親から要望の“檸檬”という名前は却下したものの、檸檬は僕のマスターとしての出発点であり、また僕の育った家そのもの。

だから当時喫茶店の外壁にかけてた檸檬の銅板を綿町カフェの店内に飾る事にした。

綿町カフェは、檸檬の意思を受け継いだお店にしよう。そんな風に思ったから。