ぼくがブライダルの仕事をさせていただいてきた中で、
何かと衝突してしまう事があるんだけど、それが広告宣伝についての事。

ここで言う広告宣伝とは、ホームページや各種媒体での広告とは違うものだ。

これは昔からの業界の習わしのようなもので、
結婚式の終わりに司会者がプロデュース会社の名前や衣裳のブランド名を言ったりするのを聞いた事があると思う。

例えば「今日のお式のプロデュースはスウィートブライドでした!」とか、
「本日新婦様がお召しになられたお衣裳は、〇〇〇〇デザインのドレスでした」などなど。

ぼくはそういうのが好きではない。
基本的にはぼくたちの仕事は黒子であるべきだというのがぼくの信念。

新婦様が衣裳を持ち込まれるときに、
「この言葉を披露宴の中で司会者さんに読んでもらってください、と衣裳屋さんに言われたんです」と紙をいただく時がある。
その紙には、衣裳屋さんのブランドの名前が書いてある。

ただ、そういう会社名を読まないというのはぼくの信念であって、お客様の想いではない。
お客様はひょっとしたらそのブランド名を言ってほしいと思ってるかもしれないから悩ましいところ。
だからそういう時は、お客様に読んでほしいのかどうかを確認して、何も思われていないようであれば読まないようにしている。

新郎新婦様にとってはお2人やゲストの大切な一日であって、決して業者の広告宣伝をする日でないんだから。

それからロケーション撮影の時など、車にスウィートブライドのステッカーを貼ったり、何かのぼりを持ったりしたらいいんじゃないか、
・・・なんて事を本当によく周囲から言われる。

ご利用されるお客様にわかっていただく主旨での「ステッカー」や「のぼり」はご案内という意味でする必要があると思うが、
この会社がやってるんだという事を誇示するための主旨での「ステッカー」や「のぼり」には、まったく興味がない。

結婚式の仕事は、何かを売る仕事ではない。
言い換えれば、売るために仕事をしているわけではないという事だ。

お2人の幸せをお手伝いする仕事で、非常にボランティア精神の高い業種であると思う。

でも、こういう事は、ぼく個人の信念とこだわりであり、何をどう選択するかは新郎新婦様次第なわけで、
お2人が宣伝していいという事であれば、ぼくがとやかく言うことではないというのは承知している。

ただ、そういうものこそが結婚式をする会社としての哲学であり、
スタッフ含め、働く上で、実はとても重要な事であるという認識が必要なんじゃないかと思うのである。

なぜぼくたち婚礼スタッフは結婚式当日に黒いスーツを着ているのか。

黒子という言葉は、本来は黒装束を着ているという事で「黒衣(くろご)」が語源。
裏方に徹する者という意味だ。

そういう事なのである。